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この作品を一から十まできちんと理解できる人っているのかな〜。 ・・というのは、私が理解しきれないからなんですが・・・。 「ポーの一族」「トーマの心臓」で有名な少女漫画の大御所、萩尾望都さんのこちらの作品。 もう、彼女の精神世界への追求というのはどこまでいってもきりがないです。 日常と、精神世界の暗い淵とのいったりきたり。 そのジェットコースターの中で、なんとか主人公、ジェルミを理解したいと苦心するのですが、毎回毎回、ただ魅せられて物語が終わっていきます。 例えばですけど、まあ、ありえない話ですけど、もしも、私が漫画家になっていたとしても、この物語は描けないです。手も足もでない。考えが及ばない。ひれ伏すのみ! 萩尾望都という人の人間の深さ、思考の広さ、追及の粘り強さ、やさしさに、ただ脱帽してしまいました。 (以下の文はあらすじなんですが、ちょっとネタ明かしみたいな部分もあり、あらすじを知らずに読んだ方がいいとも思うので、まだ作品を読んでない方は読まない方がいいかもしれません。) 主人公ジェルミはボストンで、母子仲良く暮らすごく普通の少年でした。 ある日、母のサンドラに再婚話が持ち込まれます。 相手の男はイギリスから出張でボストンを訪れていたグレッグ・ローランド。 お金持ちで、社会的地位もあって、死別した前妻のとの間に子供は2人。再婚したあかつきには、みんな一緒にイギリスで暮らそうと言います。 気が弱くて、甘えん坊で、一人じゃなんにもできない少女のような母サンドラにとって、グレッグは白馬の王子様。もう、グレッグなしでは生きていけません。 ところが・・・です。 グレッグの目的はサンドラ一人ではなかったのです。言葉たくみにジェルミに近づき、性的暴行を加えます。傷つくジェルミ。再婚に反対しますが、理由を母に告げることができず、苦しみます。結局、母はグレッグと再婚。言葉たくみにだまされ、ジェルミも母とともにイギリスのグレッグの家へ移り住んだのでした。 そして、その後も母には内緒でグレッグの愛人としての日々が始まりました。暴力に苦しむジェルミ。やがて、耐え切れなくなった彼は、グレッグの殺人を計画し実行します。ただ誤算だったのは、誤って母サンドラも一緒に殺害してしまったこと。彼は、殺人への罪悪感と暴力による心の傷により、ドラッグと売春にハマり、暗くて深い絶望の淵へ落ちていくのでした。 そしてそれに気づいたのが義兄のイアン。イアンはジェルミを憎んだらいいのか、愛したらいいのか分からないまま、そして、グレッグという父の血を背負ったまま、ジェルミの更生の手助けをします。果たして、二人は深い絶望の淵から這い上がることができるのでしょうか・・・。 というのがあらすじです。 長いです。なにせ全10巻ですから。 ジェルミがもっとずる賢くて、感受性の鈍い人間だったらこの物語はもっと違うものになっていたのでしょう。日々の生活を送る中で、必死にもがく彼らの姿が、痛々しくてなりません。 そして魅力的な登場人物たち。 この物語の中で、特に好きな場面があるのですが、 ジェルミがガールフレンドのマージョリー(私はこの娘が大好きです)に誘われて「貴石」を買いに行きます。ジェルミはそこでつい精神世界に迷い込んでしまいます。マージョリーは迷子になったジェルミを連れ戻し、こう言います。 「見つかったの?」 「え?なにが?」 「奇跡を買いに行ったんでしょ。見つかった?」 彼女のこういう少女らしいあっけらかんとした優しさが、本当にかわいい。 正直、読むとどっと疲労する作品なのですが、定期的に読み返してしまいます。 自分の視点をどこに置くかで、また違った感覚を味わえる、不思議な奥深い作品です。 残酷な神が支配する (10)
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